約 5,047,507 件
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1073.html
戦うことを忘れた武装神姫 - type_S -03 皆様、こんばんは。 神姫との生活、いかがお過ごしでしょうか。 キャッキャウフフも、ドキドキハラハラも。そして、夜の生活も。 それぞれに、それぞれの生活があることでしょう。 しかし。 世の中には、本当は怖い神姫との生活というものもあるのです。 今宵は、その一部をご紹介しましょう・・・。 ・ ・ ・ ・ ・ ~めざまし神姫・Phase-2:ハウリンの場合~ 朝。 目覚まし時計の電子音が部屋に響く。 「・・・。」 布団から手がぬっと出てきて、器用に目覚まし時計の電池を外した。 電子音が止まると、再び手はずるずると布団の中へ。 「相変わらず器用ですね・・・って感心している場合ではありませんね。」 ベッドサイドに立っていたハウリンは、静かにまくらでよだれを垂らす男の顔の横へ立った。 「マスター、起床の時間です。」 ぺちぺちと小さな手で男の頬を叩くも、反応無し。ハウリンはもそもそと耳元へよじ登り、囁くように、しかし先よりも大きな声をかける。 「朝ですよ! もう、起きてくださいっ!」 だが、男はすやすやと穏やかな寝息を立てたまま。 「・・・。」 その寝顔に、一瞬見入ってしまったハウリン。ポッと頬を染めるも、すぐさま首を振って次の作戦を考える。 「あ。 以前、マスターと見たDVD! あれの真似をしてみましょう。。。」 ハウリンは耳元に膝をつくと。 「・・・はむっ」 男の耳たぶを甘噛み。 男が、一瞬ぴくりと反応した。 「・・・ふぉれふぁ・・・ひいへはふへ・・・(これは・・・効いてますね・・・)」 はむっ、 はむっ、 はむっ・・・ 数分間は続いただろうか。 ハウリンが自ら噛みやすいように出す唾液で耳たぶがヌレヌレになり、はむはむと噛む音がぴしゃぺちゃと卑猥な響きに変わった、その時だった。 「ぅわあぁあぁあぁぁあぁあぁぁぁっ!!!!!!!!!」 大絶叫と共に、男が飛び起きた。 投げ出されたハウリンは空中で見事に姿勢を変え、男の腿へしゅたっと着地。 「おはようございます、マスター!」 「はぁ、はぁ、はぁ・・・お、ハウリンか・・・。おはよう。今日は君がめざまし当番だったよね。」 と言うなり、男はため息ひとつ。 「どうされました?」 「いや、その・・・この前一緒に見たAVのシーンが夢になってな・・・耳をはむはむとしゃぶられる強烈な夢d・・・」 その時、股間のテント状の部分をじっと見つめるハウリンの視線に気づいた男。 ・・・顔を赤らめて、もじもじするハウリンと目が合う。 ・・・気まずい雰囲気。。。 「あの、どうも申し訳ありません・・・あのDVDのように耳をはむはむすれば、すんなり起きると思ったのですが・・・」 「ちょ・・・それ違う! なんだその豪快な取り違いはっ!!!」 「すみません!!!」 「・・・でもな。 そんな夢を見てしまうくらいに君のはむはむは上手だっt・・・はっ! 今・・・」 ふと気づくと電池を抜いたままの時計が傍らに。 ということは・・・大慌てで、腿に乗るハウリンを再び投げ出し。机上の腕時間を確認。 いつもの出勤時刻・・・15分前。 「やっべーーーー!!! 遅刻、遅刻するっ!!!」 ベッド上でちょっとポーズしてみるハウリンには目もくれず、バタバタと男は仕度を整え始めた。 悶々としたまま、ろくに仕事も手に付かない一日を過ごすハメになった男だったが、寝起きの悪い自分のために必死に考えてくれたハウリンを当然怒ることもできず。 夜もまた、悶々と過ごす独り身であった。。。 神姫との生活。 それは、快楽と地獄が紙一重なのかも知れない。 >>次の話を読んでみる>> <<トップ へ戻る<<
https://w.atwiki.jp/natsumikan810/pages/15.html
@wikiへようこそ ウィキはみんなで気軽にホームページ編集できるツールです。 このページは自由に編集することができます。 メールで送られてきたパスワードを用いてログインすることで、各種変更(サイト名、トップページ、メンバー管理、サイドページ、デザイン、ページ管理、等)することができます まずはこちらをご覧ください。 @wikiの基本操作 用途別のオススメ機能紹介 @wikiの設定/管理 分からないことは? @wiki ご利用ガイド よくある質問 無料で会員登録できるSNS内の@wiki助け合いコミュニティ @wiki更新情報 @wikiへのお問合せフォーム 等をご活用ください @wiki助け合いコミュニティの掲示板スレッド一覧 #atfb_bbs_list その他お勧めサービスについて 大容量1G、PHP/CGI、MySQL、FTPが使える無料ホームページは@PAGES 無料ブログ作成は@WORDをご利用ください 2ch型の無料掲示板は@chsをご利用ください フォーラム型の無料掲示板は@bbをご利用ください お絵かき掲示板は@paintをご利用ください その他の無料掲示板は@bbsをご利用ください 無料ソーシャルプロフィールサービス @flabo(アットフラボ) おすすめ機能 気になるニュースをチェック 関連するブログ一覧を表示 その他にもいろいろな機能満載!! @wikiプラグイン @wiki便利ツール @wiki構文 @wikiプラグイン一覧 まとめサイト作成支援ツール バグ・不具合を見つけたら? 要望がある場合は? お手数ですが、お問合せフォームからご連絡ください。
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2736.html
這いよる影、迫る白 私は暗い部屋の中で目が覚めた。私の部屋はここまで暗かったっけ? と思ったら、カーテンが閉まったままだった。 私はベッドから起き上がろうとして、出来なかった。体が異常に重く、起き上がる気力すら沸いて来ない。 そして、なによりこの胸の内の空虚感。大切な何かを失ってしまったかのような、そんな風穴。なのに、その大切な何かが思い出せない。 まるで昔に戻ったかのようだった。あの日、華凛が遊びにやって来てくれるまでの、引きこもって何も寄せ付けなかった自分に。 (これは……夢だ……) もう私は変わったんだ。―――と出会い、沢山の人と触れ合って変わったんだ。 じゃあ、今目の前に広がる光景は何? 大切な何かは? 頭の中に霞がかかり、次第にぼんやりとしてくる。消えかける意識の中、大切な何かの名前が――。 8月1日(月) 「シリアっ!!!」 「は、はいっ!?」 ベッドから跳ね起きると、そこはいつもの明るい自分の部屋だった。カーテンの開いた窓から明るい陽射しが差し込み、そして、机の上にはシリアがいた。 「ど、どうしたの樹羽……ずいぶんうなされてたけど……」 シリアが心配そうにこちらにやって来た。小さな体でうまくベッド脇のテーブルにまで登ってくる。 「すごい汗……大丈夫?」 自分も額に手を当ててみて、今までにないほどの汗が出ていることに気が付いた。よくみれば、パジャマも汗で濡れている。 原因は、紛れもなくあの悪夢のせいだ。嫌な夢ほど覚えているもので、今でも頭の中に鮮明に覚えていた。 私は無言でシリアを手の上に招いた。シリアも無言で乗ってきてくれる。神姫の僅かな重みが、掌にのしかかった。 「シリアは、私の側からいなくなったりしないよね……?」 ふとそんな言葉が漏れた。シリアはなんだかよくわからないような顔をしていたが、その顔がふっと微笑んだ。 「大丈夫だよ。私は絶対に樹羽の側から離れたりしない」 「本当に本当?」 「本当に本当」 「なら、よかった」 シリアのお陰で、私は安心出来た。そうだ、あれはただの夢に過ぎないんだ。過ぎない……はずなのに……。 (どうして……こんなに不安になるの?) 前言撤回、やっぱり不安は残っている。それは、どうあっても拭いきれるものではなかった。 胸の内から何かが込みあげてくる。それは言い様のない不安と恐怖。気付けば私は泣いていた。込みあげるそれを押し殺すように。 「み、樹羽っ!? 大丈夫!? お腹痛いの!? それとも頭!? えぇと119!?」 突然の出来事でシリアがパニックになっている。落ち着かせないと。笑って、大丈夫って言わないといけない。 なのに、涙はどんどん溢れてきて、もう自分でも止められそうになかった。 その時、白いハンカチが目に止まった。私の物じゃない。じゃあ、これは……。 「一日ぶりに見たら酷い顔してるじゃない。ほら、これで顔拭いて」 「華凛……?」 顔をあげると親友の顔がそこにあった。またいつものようにノック無しで入ってきたらしい。 しかし、何故だか華凛の姿が霞んで見えた。きっと涙のせいだろう。私はハンカチを受け取り、涙を拭いた。もう一度見てみると、華凛はちゃんとそこにいた。 「華凛、もう大丈夫なの?」 「一日寝たら元気になったわ。それより、今は樹羽の方が心配ね」 そう言って笑う華凛には一昨日のような倦怠感や疲れは見えなかった。本当に元気になったようだ。 シリアをテーブルに戻し、私はベッドに腰かける。華凛はそのまま立っていた。 そこで私は華凛の服装に注意がいった。以前のようなタンクトップに短パンではなく、動きやすい洋服にジーンズ、おまけに靴下までちゃんと履いている。華凛は暑いのが苦手で、いつも涼しげな格好をしていた。今日のはまるで、どこかショッピングへと出向く格好のようだ。 「華凛、どこか出掛けてきたの?」 「これから行くのよ、樹羽と二人で」 またゲームセンターだろうか? だったら、こんなに気合いの入った格好をしなくてもいいはずだ。 私が困惑していると、華凛は満面の笑みで言った。 「今日は、樹羽と遊びに行こうと思ってさ」 「遊び?」 「そ、毎日毎日バトルばっかりじゃ疲れちゃうでしょ? だから息抜きもかねて、ね?」 華凛の言っていることはもっともだ。息抜きは必要であり、だから遊びに行こうと言うのは何も間違ってはいない。 だが、そうやって提案する華凛には、どこか焦りの色が見えたような気がしたのだ。 「……わかった。行くよ」 「ありがとう、あたしは外で待ってるわね」 そう言って、華凛は部屋から出ていった。私はクローゼットの中から淡いブルーのブラウスにスカートを出した。あまり着る機会はなかったが、まあ今日ぐらいはいいだろう。 着ては見たが、ちょっと自信がなかった。鏡を見ても、似合ってるのかわからない。 「どうかな、シリア」 「すっごく可愛いよ! 大丈夫! 自信持って行っていいよ!」 と、シリアから称賛の限りを送られる。そうか、大丈夫なのか。なら、これで行くとしよう。 私は最後にいつものポーチを腰にひっさげ、そこにシリアを入れた。ゲームセンターには行かないだろうけど、どうせならシリアも一緒の方がいい。 私は自分の部屋の扉を開けた。その先には華凛が待ってくれている。 なのに、暗い影はいつまでも消えることはなかった。 朝になり、あたしは目が覚めた。この間のように昼でした、なんてことにはなっていない。ただし、日付は予想した通りだったが。 枕元のアナログ時計の文字盤には、デジタル表記で日付と気温と湿度が表示されている。この際気温や湿度は関係ない。問題は、日付だ。 8月1日(月) あたしが眠ったのは7月30日。つまり丸一日寝ていたことになる。これについては、あたしが寝る時に大体予想がついていた。 (今日でラスト、か) 少な過ぎる時間の中で、樹羽はどれだけ成長できただろう。多分大丈夫だとは思う。シリアもついていたし、神姫バトルを通じていろんな人と触れ合ってきたのだ。これで進歩していない訳がない。 さて、問題は今日だ。このまま何もしないで終わるのか、最後くらい樹羽と遊ぶのか。 (本当なら、何もしないのがベストよね) そう、それが一番良い選択肢だ。しかし、いくらなんでもそれではあたしが満足出来ない。 (まったく、つくづくわがままね、あたし) あたしは洋服の入っているタンスの中から、今まであまり着ていなかった服を引っ張りだした。スカートも考えたが、ここはジーンズで。靴を履いていくのだから、裸足ではまずいだろう。 あっと言う間に出かける支度が整った。ショルダーバックに財布やらハンカチやら携帯を詰め込む。 あとは、樹羽のところへ行くだけだ。 あたしは最後にもう一度部屋を眺めた。この部屋とも、今日でさよならなんだし。 その時、机の上のある物に目がいった。あたしアレ出しておいたっけ? 一昨日出した記憶はないが、まあ、別にいいだろう。 「……今日、そっちに行くからね、リンディ」 今はもういないクレイドルの主に向かって、あたしはそう呟いた。 華凛は私の姿を確認すると、何も言わずに玄関まで降りていった。普通なら、ここで何か一言二言あってもいいと思うのだが、やっぱりまだ本調子じゃないのだろうか? 玄関まで来て、華凛はふいにこんなことを言った。 「あ、そうだ。悪いんだけど、今日は樹羽と二人きりで遊びたいの」 それはつまり、シリアを抜いた二人だけで、と言う意味なのだろう。その言葉に、私はかなりの違和感を覚えた。いつもの華凛なら、シリアがいることぐらい許容してくれそうなのに、今日は二人きりが良いと言う。 この華凛は本当に私が知る華凛だろうか、と一瞬そんな考えが頭をよぎったが、すぐに捨てた。そんなことは有り得ない。その代わりに、私は華凛に理由を聞いた。 「どうして? シリアも一緒の方が楽しいよ?」 「あたしだってそう思うわ。でも、お願い。今日だけは、あたしのわがままを聞いて欲しいの」 そう懇願する華凛からは、必死さが伝わってきた。何故そこまで頼むのかはわからないが、華凛の想いを無下にする訳にもいかない。しかし、シリアを一人にして自分だけ遊びに行くと言うのも憚られる。心の中に葛藤が生じる。私はどちらを選択すればいいのだろう。 「樹羽、私はいいよ。華凛さんと二人で楽しんできて!」 「シリア……」 シリアは自らポーチから出ると、靴箱の上に着地した。 「その代わり、私の分までちゃんと楽しんできてね!」 シリアはそう言って笑う。小さなその姿は、とても立派に、逞しく見えた。 私はシリアの気遣いに甘えることにした。本当なら、三人で行きたいのだが、華凛が二人きりがいいと言うから仕方がない。 だが、私はまた今朝の暗い影を思い出してしまった。またあの恐怖がこみあげてくる。帰ってきたら、シリアがいなくなってしまったりしないだろうかと、たまらなく心配になる。 「一つだけ、約束して」 「何?」 だから私は、約束をする。 シリアなら、ちゃんと守ってくれる。 「私が帰ってきたら、ちゃんと、おかえりって言ってくれる?」 それはとても簡単な約束。当たり前に行われるべき事。 だからこそ、約束したかった。 「うん、約束する。樹羽が帰ってきたら、ちゃんとおかえりって言ってあげる」 「約束、だからね?」 「うん。だから、行ってらっしゃい」 小さな笑顔に見送られ、私と華凛は家を出た。 家の扉が閉まるまでシリアはちゃんと笑っていた。 「ごめんね、わがままでさ……」 「ううん、大丈夫。たまには、華凛と二人だけって言うのも良いと思う」 シリアが抜けたポーチの隙間が少し寂しいが、今日だけは我慢しよう。 「ありがとう。シリアのことなら心配しなくても大丈夫よ」 華凛は私の手を握りながら言った。 「だって……シリアは、これからもずっと会えるから……」 「華凛……?」 「何でもないよ、行こっ!」 何か言っていたがうまく聞き取れなかった。華凛はそのまま私の手を引いて歩いていく。私は遅れないように頑張ってついていくことで精一杯だった。 第十二話の2へ トップへ戻る
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/545.html
適材を誂え、適所に与え(後半) 私・槇野晶は、当初彼女ら“槇野晶の神姫”に戦わせる気がなかった。 より正確に言えば、神姫バトルを無理強いする気は私になかったのだ。 だが、ロッテは戦いを望んだ……自らの存在意義を求めた故だったか? そうして“誇り”を培った彼女に刺激され、アルマとクララも望んだ。 「さて、ロッテが“フェンリル”を気に入ったのならば次は此方か」 「あっ、はいっ!クララちゃんがまだなら、これはあたしの……?」 「そうだ、こっちも拘って作ったぞ……数が少々多いがな、ほれッ」 “客のニーズには全力を以て応える”……それが私のモットーである。 ならば“妹達”の求めにも全力を以て応じるのが、私の役目であろう? という信念の元、アルマに用意したのは……6振りの黒い刃であった。 専用の鞘も2本セットだ。強化セラミックの輝きには、自信があるッ! 「うんと、マイスター。この柄や鞘のあちこちについてるのは……」 「気付いたかアルマや、お前達の躯にあるジョイントと同じ物だよ」 「MMS用汎用ジョイント……これは、形を組み換える剣ですの?」 「その通りだロッテ、これぞ“ヨルムンガルド”。アルマの剣だ!」 「……じゃあボクの武器は“ヘル”で決まりなんだよ、マイスター」 ──────ちょっとそのツッコミは鋭すぎないか、クララや? 北欧神話のロキ神が女巨人と設けし子にして、異形なる怪物達。 即ち“フェンリル”に“ヨルムンガルド”……そして“ヘル”。 そこから銘を持ってきたのだが、博識なクララにはお見通しか。 さておきこの剣は、ギミックが命。使い分けこそが真髄なのだ。 「基本スタイルは幾つかあってな、この分離状態が“スケルトン”だ」 「じゃあ、こうして……ツガルタイプのフォービドブレイドみたいに」 「それが“ウィング”形態、双振り作れる事を前提として設計したよ」 「えっと、なら……今度は大きな四振りでフブキタイプの……んしょ」 「大手裏剣だな、それが“テイル”。小型の双振りで“スケイル”だ」 「あ、ブーメランですか。うんと、じゃあ……両方を混ぜたりっと♪」 がちゃがちゃと弄っている内に、この剣の面白さと性能が分かる様だ。 表面上は笑顔のアルマだが、それでいて真剣に完成した形態を構える。 用途が多ければ、組み換え自体も含め習熟が必要になってくるからな。 双振りの死神鎌である“ファング”、防御を考えた大型剣“ホーン”。 「そしてこれが最大形態であるツインナギナタ、“クロウ”だ」 「“爪”ですか……えっと、マイスター。あたしも試しにっ!」 「そう言うと思って、ウレタンブースに棒を数本用意したぞ?」 「あ……ありがとうございますっ!早速、試し切りしますね!」 そう言ってアルマは、林立する12本の木……その中心へと立った。 鞘から展開した柄を右手で持ち、左手を添えて長槍の様に構える。 ──────静寂の数瞬、その後にアルマの裂帛の一声が響く!! 「やっ……はあっ!せい、たっ!!ふ、やぁあっ!!!」 「凄いですの、木の棒ががあっという間に細切れに……」 「……あの剣は日本刀や小太刀に見えても、実は両刃?」 「有無。だが……ここまで見事に扱いこなすと壮観だな」 空気を震わせる気迫の一声が響く度、棒が細切れになっていく。 爪の様に配置された、片側3つの刃が縦横無尽に振り回される! 数十秒後。昇竜を白く焼き付けた剣が止まり、演舞は終わった。 意外にも踊りを趣味とするアルマの“舞い”は、非常に……ッ! 「綺麗だぞ、アルマっ!初めてでそこまで使いこなすのかッ!!」 「マイスター、喜んでくれてうれしいですっ。でも、まだまだッ」 「その意気だ!……二人とも、今日はもう少し訓練するといいぞ」 「はいですのっ。サイレンサーをつけて射撃の練習しますの~♪」 程なく特訓に没入し始めた二人を見て、私はクララを呼び寄せる。 これらは全形態で扱える共通装備……私は別の装備も作っていた。 それらの仕上げの為には、どうしてもクララの助言が必要なのだ。 「というわけで、これがお前達共通のCQB用装備の図面だ」 「デザインは共通なんだね、マイスター……足先の部品は?」 「移動装置だ。飛行能力は搭載できんからな、やむを得ない」 昨日、エルゴの日暮めからメールが来た。“魔術”用装備の指針だ。 これはクララ専用の“Valkyrja”システムに組み込む、必要な要素。 その当人から“Valkyrja”は大型過ぎると、指摘を受けたのが先日。 打開の為に、ロッテの一言を元にして別の装甲服を作っているのだ。 「“Valkyrja”を折り込む手前重量はかさむが、お前達なら大丈夫だ」 「でもただ装甲を外すだけだと……隙が大きいかも知れないんだよ?」 「そこはしっかり考えてある。それ故に“アレ”を組み込めるのだ!」 「……戦闘にはあまり意味がない。でもボク達のスタイルには、必要」 「そうとも。お前達はこの槇野晶の“妹”なのだからな、重要な事だ」 そこには私達の趣味嗜好が多分に混ざるが、まあそれはよかろう。 最近はアルマも、恥ずかしさを残しながら慣れてきてくれたしな。 戦略的にも、この“法衣”を自由に出し入れできる機能は欲しい。 ゼンテックスマーズ社の研究理論なので少々解析に骨が折れたが、 日暮めが“魔術”のついでに手伝ってくれた、後はクララの力だ! 「というわけで、解析した“アレ”を組み込む装備を今から作る」 「了解だよ……その後で、この“法衣”用に武器を作るんだもん」 「有無、時間短縮を図りたい……クララの力を、少し借りるぞ?」 「喜んで再調整するんだよ、マイスター。ボクも、楽しみだから」 「そう言ってくれるなら、妥協無く作り上げよう。待っていろッ」 ──────腕と誇りを賭けた、私の“戦い”だから……ね? 次に進む/メインメニューへ戻る
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1284.html
人物紹介 鴻乃ゆかり&海棠卯月 人物紹介 鴻乃ゆかり&海棠卯月鴻乃 ゆかり(こうの ゆかり) アリエス クラリス 海棠 卯月(かいどう うづき) 耿(アキ) 邏貴(ラキ) 鴻乃 ゆかり(こうの ゆかり) 性別:女 年齢:17(満18) 血液型:O 主役をさらっと掠め取っていった人A アリエス・クラリスのマスターであり、黒髪長髪の女子高生 性格は明るく結構好き勝手に生きている自由人 今日も今日とて卯月を引き摺りまわして東へ西へ 神姫との出会いは卯月に 「ちょっと絵書いて」 と、手渡されたマオチャオとハウリンからである その後、天使型と悪魔型の存在を知り二人に一目惚れをし今に至る 最近の悩み事は何かにつけて卯月がぷにってきたり、頭撫でたりすること アリエス タイプ:アーンヴァル CSC:ジルコン・ダイヤモンド・オパール ランク:C ゆかりの趣味でふりふりだったりひらひらな衣装を着てる事が多い しっかりしているようで少し天然、基本的に誰に対しても敬語で話す 基本的に兵装は純正装備を装備し、至近距離での攻撃を得意とする クラリスとのタッグマッチ時は射撃武器を用い中~遠距離からの援護に切り替えている クラリス タイプ:ストラーフ CSC:ガーネット・サファイア・トパーズ ランク:C ゆかりが双子設定萌えな為アリエスと同時に起動 至る所にトラップを仕掛けたり悪戯大好き アリエスが後でフォローしてるとか 戦闘では基本的に純正装備をし、近接及び近距離での戦いを得意とする また、フィールドに対し自作のトラップ(落とし穴や地雷など)を仕掛けていることもある アリエスとのタッグマッチ時は近接武器を使い接近戦を行っている 海棠 卯月(かいどう うづき) 性別:男 年齢:20 血液型:A アキとラキのマスターであり、ホビーショップ『雪ノ下』でバイト中の大学生 性格は明るく真面目で三枚目を地でいく人 意外と熱血直情馬鹿な所もあり、密かにGを尊敬してる節アリ 耿(アキ) タイプ:ハウリン CSC:サファイア・エメラルド・ダイヤモンド 利き腕:左 ランク:C 起動順は邏貴より早いが、実際は数秒程度の差しかないのでほぼ双子と同じである 一人称は「ボク」で話し、気さくでボーイッシュな性格である 面倒見も良く、邏貴の姉として仲良くやっている 戦闘に関しては、基本的にプチマスィーンを牽制に使い吠菜壱式とカロッテP12で近距離~中距離での戦闘を得意としており、邏貴とのタッグ戦の場合は、接近戦は完全に邏貴に任せ自分は遠距離からの支援に徹している 邏貴(ラキ) タイプ:マオチャオ CSC:ルビー・エメラルド・ダイヤモンド 利き腕:右 ランク:C 起動順は耿より遅が、実際は数秒程度の差しかないのでほぼ双子と同じである 一人称は「私」で話し、明るく元気であるが喜怒哀楽が激しい 基本的に口調は丁寧であるが、猫型故か語尾に「にゃ」が付く事がある 因みに、猫型らしく炬燵で丸まるのが好き 戦闘に関しては、基本的に遠距離の敵にはプチマスィーンで牽制しつつ機動力を生かして近距離もしくは白兵戦に持ち込む戦法を取っている 武器は主に右腕にガルガンテュア、左腕に研爪or旋牙or防壁を装備していることが多く、耿とのタッグ戦の場合は、耿とプチマスィーンに射撃支援を任せ自分は接近戦に徹している 戻る
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/496.html
総てを司る、脆き神の姫(後半) 数時間後。そっとCSCを装填し直し、バッテリー確認……満タン。 彼女の起動を開始、20%……50%……起動を完了。モーターの微細な 音の後、私にとって二人目である彼女、“クララ”が目を醒ました。 初めツガルタイプを装備していた名残として頭髪は緑色に変更され、 大きな瞳はロッテと同様に、琥珀色の澄んだ逸品へ取り替えてある。 その上に眼鏡。これは、彼女の特質を象徴する為に選んだ品なのだ。 「ここ……ボクは?マスター登録後に、火器が使えなくて……」 「そうだ。そして解析の結果、お前を私が引き取る事にしたよ」 「……ボクを?ボクの名前は?貴女がボクのマスター、なの?」 「有無。私の名前は槇野晶、お前に与えし名前は“クララ”だ」 「クララ……それがボクの新しい名前なの?了解だよ、マ……」 「“マイスター”と呼ぶといいとおもいますの~、クララっ♪」 状況が今一つ飲み込めていないクララに、私とロッテで説明を行う。 “オーバーロード”の症状と、ロッテとは事実上“姉妹”となる事。 そして、前のユーザーである常連が心底クララを気にしていた事を。 初めは驚いていたが、元より無口なのか……表情には変化がないな。 「そうか……ボクは棄てられたわけじゃ、ないんだね?」 「そうなんですの。クララをずっと案じた結果ですの♪」 「……分かったんだよ、マイスター。ロッテお姉ちゃん」 「お姉ちゃんッ!?……飲み込みが早いな、クララや?」 「何故かロッテを“姉”だと思えるんだよ、マイスター」 ふむ。あまり饒舌ではないが、言いたい事をズバズバ言う性質か? ロッテ以上に己の気持ちを、客観的かつストレートに言ってくる。 その間も、表情は微細な変化に留まっているが、心は激しい様だ。 そこで私は少し意地悪い質問をする事にした……気になるからな。 「ではクララや、お前は今の立場について後悔しておるか?」 利発というか理路整然というか、彼女はこの問いに淀みなく応えてきた。 「……前のオーナーが買わなかったら、ボクは居ないんだよ」 「で、マイスターとロッテお姉ちゃんはボクを救ってくれた」 「だからボクはこうして、“妹”になれた事が誇りなんだよ」 「ボクを導いてきた幾つもの可能性に、感謝してるもん……」 そしてすっと微笑むクララ。私は堪らずに彼女を抱き上げてやる。 今はロッテにやる様な激しい抱擁はせず、まっすぐに見つめよう。 似合うと思い掛けてやった丸眼鏡が、綺麗な目を引き立たせるな。 「ではクララよ。今この時より、果せるその日まで」 「お前も、私の“妹”だ……構わぬな、クララよ?」 肯くクララの額へと、私はそっと口付けをする。いわば誓いの証だ。 これはロッテにも勿論行った。照れくさいが、これが本心だからな。 ロッテも覚えているのか、微笑んだ顔で“儀式”を見ているが……。 「こ、こらロッテ。ニヨニヨ見ているなッ!ほら、終わったぞ?」 「じゃあマイスター、クララをこっちにお願いしますの~……♪」 「む?分かった、ほれクララや。ロッテの側に行ってやってくれ」 私の手から降り立ったクララを、ロッテは優しく抱きしめ……口付け。 ってこら、私の“儀式”を真似たのか知らないが、そこはそのッ……! 「ま、待てロッテ!?そこは額ではない、唇ではないかッ?!」 「ん……えへへ、マイスターの本心が額なら、わたしの本心は」 「ぁ……ロッテお姉ちゃんの本心は唇なんだ……覚えたんだよ」 う、うううむ……微妙に負けた気がするッ! ……まあ、挽回の時は今後に回すとしてだ。 彼女にはこれから、色々な説明をせねばな。 「まずクララ、お前をバトルに出せる方法を私は見つけたぞ?」 「バトル……?マイスター、銃も剣も苦手なのに不安だよ……」 「有無、だがお前には類い希なる頭脳──“ゲヒルン”がある」 「“ゲヒルン”……ドイツ語で脳。それが、ボクの特殊能力?」 「そうだ。知識を最大限活かす能力……それこそ“魔術”ッ!」 「魔術?クララが魔法使いになっちゃいますの、マイスター?」 驚くロッテ。まあ魔術などと言う非科学的な物を普通は信じまい。 だが私にはクララに魔術を使わせる算段が確かにあるのだ、有無。 この際は、“情報魔導学(TechnoWizardly)”とでも名付けようか。 そう。神姫が科学的だからこそ出来る魔術のアテが、私にはある。 「要するにクララの力を用いて、仮想空間を書き換えるのだな」 「あ!そう言えば一部解禁されたって、前発表されましたの!」 「……理論上は可能だけど、生身では処理が追いつかないもん」 「だろうな。故にその為の装備を、これから三人で相談してッ」 「すぐにクララも戦乙女にしちゃいますの~♪ね、クララっ?」 この言葉を経て、ようやくクララの顔にもうっすら笑みがこぼれた。 たまらず私は二人を抱き上げ、頬を貸してやる。トーンは抑えてな。 まだ少しぎこちなさは残るが、これからはクララも大事な“妹”だ! 「……ボクうれしいんだよ、マイスター」 「これからも、もっと嬉しくなるぞッ!」 「3人で凄く楽しくなりそうですの~♪」 ──────これからも宜しくね、“妹達”。 次に進む/メインメニューへ戻る
https://w.atwiki.jp/kyoudou/pages/67.html
wiki 「共同の歴史をまとめようぜ」とか誰かが言い出したために始まったこのwiki。しかし春休みの終わりと同時に皆の関心が薄れてしまい、かなり中途半端なところで「もう流行終わったよ」的な感じが漂っている。 まあそんなことより来週のテストのほうが重要なのですが……
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1716.html
白花と黒華──あるいは聖者の再来(前半) ──『女三人依れば姦しい』って言葉が、この島国にはあるらしいわね。 ……それなら、五人集まればどうなのかしら?しかも皆が皆を大好きで、 更に今日は何か、恋人同士には大切な日らしいの。どうしようかな──? 第一節:白花 ──通電……システムをスタンバイから解除……徐々に、アタシの意識が 戻っていく。目を開ければ、そこはもう見慣れた白天井。時刻は朝六時。 強化プラスチックとフレームの躯も、気怠くはなくて……今日も快適ね。 「う、うぅん……よく寝たわ、って“神姫”には変な言い回しかしら?」 「そんな事無いですよ、おはようございますエルナちゃん……よっと!」 「あ、おはよアルマお姉ちゃん。そうなの?マイスターがよく言うけど」 「そうですよ~。神姫も休眠状態で、メモリのデータを整理するんです」 「ふぅん、頭がスッキリするのはそう言う事かしら……それ、大丈夫?」 テーブルを伝って、アタシ・エルナは程良く暖房の利いた部屋を歩くの。 マイスター・晶お姉ちゃんが作ってくれた“ネグリジェ”は、着やすくて 寝起きに室内を移動するには最適なのよね。で、歩いた先で発見したのは 人間規格のフライパンを、テコの原理で器用に振るうアルマお姉ちゃん。 中に入った目玉焼きの、美味しそうに油が跳ねる音……堪らなくなるわ。 「にしてもさ、それ重くないの?何だったら着替えてすぐに手伝うけど」 「平気ですよ。元々力仕事は得意ですし、今日は“これ”も有ります♪」 「ああ……確か“Rosa bianca”だったかしら?その新作ドレスってさ」 「ええ。今日から実働テストって事で、お手伝いの時に着てるんですよ」 元々このMMSショップ“ALChemist”に住む神姫達は、パワーローダーとか そういう大掛かりな補助具が無くても、人間の仕事を多少はこなせるの。 でもアタシは、なかなか上手く行かなくて……勿論お姉ちゃん達も最初は そうだったけど……見かねたマイスターが作ったのは、服型の補助機構。 「で、でさ……それってどう?着心地とか動き易さとか、快適かしら?」 「普段の服と殆ど代わらないですし、モーターにも楽々ですよ♪それっ」 「そっかぁ。アタシもそれ着れば、お手伝い出来るかしらね……あ!?」 「ふぇ?ああ、朝のお風呂ですね。もう暫くしたら出来ますから、ね?」 「う、うん。すぐ入ってくる!じゃ、また後でねアルマお姉ちゃんっ!」 更に武装化とかデザインの調整を色々施して、今度から売るらしいわよ。 その名前は“ローザ・ビアンカ”……白薔薇。確かに、可憐なドレスね。 でも、見とれてる場合じゃないわ。日課のボディウォッシュ……お風呂を 忘れちゃいけないのよ!磨き過ぎは傷付くから、シャワー程度だけどね? 「え~と、着替えは……ここね。よいしょ、っとと……あ、おはよっ!」 「エルナちゃん、おはようございますですの~♪朝のお風呂、ですの?」 「う、うんっ!ロッテお姉ちゃんは、店の……お金数えてるの、それ?」 「はいですの♪昨日はちょっと、バッテリーが心許なかったですの……」 集計機にお金をじゃらじゃらと投入しているのは、ロッテお姉ちゃんね。 一番長くマイスターと暮らしているだけあって、彼女は“ALChemist”の 業務にもとっても詳しいの。だから、たまにマイスターの仕事を肩代わり したりなんかもしてる。何時かは、アタシもコレ位馴染んでみたいわね。 「電子マネーとか色々な手段があっても、これだけコインあるのね……」 「全て置換するには、まだまだ課題も多いですの。信頼性も高いですし」 「そうなんだ……って、それ所じゃないわ。お風呂!朝ご飯に遅れる!」 「あ、今は……ううん、なんでもないですの♪ごゆっくりですの~っ♪」 そしてアタシは戸棚や手すりの上を移動して、お風呂場へ近付いていく。 この家は、こうしてアタシ達“神姫”が通る為のラインが整備されてる。 目の前を横切るクララお姉ちゃんも、戸棚からフィルムを取り出して…… って、危ないじゃないッ!?……と思った時には、もう遅かったのよね。 「きゃあっ!?あ、あいたたた……だ、大丈夫?クララお姉ちゃん!?」 「痛……荷物はお互いに落ちてないみたいだし、大丈夫だよ。おはよう」 「お、おはよ。ごめんね……お風呂に急いで入らないとって、慌ててて」 「ボクは、塾の宿題を再チェックなんだよ。一応完璧な筈だけどね……」 立ち上がったのは、クララお姉ちゃん。訳有って躯が“弱い”彼女だけど 無事みたいね、よかったわ……で、この娘は特殊な装置を使って、人間の 姿を借りて社会に食い込んでる神姫。“一応塾”っていう勉強する所に、 足繁く通ってるらしいのよね。宿題も、そこから出されたのかしら……? でも人間になる気分ってどうかしら?アタシはまだ体験したくないけど。 「……それで、エルナちゃんはこれからお風呂に入るのかな?“今”?」 「へ?う、うん。もうじき朝ご飯だから、急がなくちゃって……じゃ!」 「あ。まぁ、今日はアレだし楽しむといいって思うんだよ?ごゆっくり」 何か引っかかる物言いだけど、それどころじゃないわッ!このままじゃ、 朝ご飯に一人だけ遅れちゃう!寂しいから、それは嫌なのよね……やっと 脱衣所に辿り着いたアタシは、ネグリジェを脱いで畳んで……更に下着も 外して、綺麗に備え付けの籠へと押し込む。これは、マイスターが何度も 教え込んでくれた“躾”。乙女の品格、って奴らしいわ。さ、入るわよ! 「よいしょ、っと……あれ?湯気が、たって……る?……え、ええ!?」 「──きゃあああっ!?だ、誰ッ!!?って……何だ、エルナかッ!!」 「う、うんっアタシよ……まッ、マイスターが……もう入ってたのね?」 「有無、その……少し寝坊してな?だから、今入っていたのだが……な」 意気揚々と扉を開けたアタシの目に飛び込んできたのは、スベスベの脚と なだらかで綺麗なボディの少女……そう、マイスターの晶お姉ちゃんッ! 躯中を泡立てて、彼女も自分を磨いてる最中だったのよ……その、情報で 頭がパンクしそうな……胸が痛い感覚に、囚われちゃうわね……あうぅ。 「む、むぅぅ……しかし、アルマが今頃朝食の支度をしているだろう?」 「うん。起きた時、丁度フライパンを振るってる所だったわ……まさか」 「そのまさかだ。お前を待たせていては、間に合わぬだろう?さぁ……」 「い、いいのね?じゃあ……お邪魔します~……んしょ、っとと……!」 「んっ……ああほれ、私の躯を踏み台にするとソープで滑るぞ?ほらっ」 でもアタシは、大好きになりたいと日々共にいるマイスターの“誘い”を 断り切れなかったわ。請われるままに、一緒のお風呂に入って……彼女の 細く白くて、お人形さんみたいにとっても綺麗な指で、洗ってもらうの。 でも触れられる度に、その……電磁パルスが、躯中を駆けめぐるのよ?! 「は、ぅぅ……んんっ、ふ……マイスター、そんな丹念にしなくてもっ」 「そ、そうはいかんぞ?今日は大事な時なのだし、何より乙女の嗜みだ」 「大事な時?ってえっと、今日は……2038年02月14日だけど、何なの?」 「ん……まぁ、昼にでもゆっくり発表しよう。今は、お風呂を堪能だっ」 「え、ええっ!?ひゃう、そこ……やぁ、自分でやれる……んんっ!?」 「……え、遠慮する事などないだろうッ!というか、私も恥ずかしいぞ」 ……普段から、マイスターとは一緒にお風呂に入るのよ。五人一緒の時も あれば、こうして……他の“姉”達と二人きりの時もあったわ。だけど、 あたしとマイスターの二人きりってのは、思えばこれが初めてなのよね。 そうしている間にも、アタシの情報処理は鈍って……頭が、霞んで……! 「だ、だって……何かおかしいのよ!センサーがないのに、信号が!?」 「……それは“心”の作用による物だと、ロッテ達は言っておったぞ?」 「ひぅ!や、やめてマイスター……何だかアタシ、切なくなっちゃう!」 「構わぬ。異常ではない……と、思う。そのまま、身を任せてくれ……」 「マイスター、マイスター……ぅ、ううんっ──!!?ふ、はぁ……っ」 そしてその時一緒になってた“姉”は、とっても嬉しそうにしていた…… その笑顔を思い浮かべて、最後にマイスターの恥ずかしそうに微笑む顔を 思い出したアタシの意識は、そこでコンマ三秒程途切れたの。理由……? そんなの分からないし、追求しちゃいけない。理論抜きでそう思うのよ! それに、マイスターに全身洗ってもらえて幸せなのよ?とっても……ね。 「しかしお前達は……風呂や肩もみでそういう声を出すのは、何故だ?」 「理屈なんかわかんないわよ。ジョイントとかも、異常はないのに……」 「まぁ、今までも異常はなかったからなぁ……ほれ、洗浄剤を流すぞ?」 「う、うん……目は閉じたわ、何時でも大丈夫よ?わぷ……っ……!!」 「よーし、後は私も流せば終わりだ……貴様、変な想像しておらぬな?」 マイスターが、変な方に声を掛けるけど……ま、それはどうでもいいわ。 泡を流してからマイスターの肩を押してあげて、アタシ達は仲良く外へと 出たのよ。そして、二人で躯の雫を拭き取り……服を着替える。品のいい 下着とブラウスに袖を通して、スカートを穿いて準備OK!さ、次は…… ええ、朝食ッ!マイスターと一緒に食事出来るのは、とても楽しいのよ? 「あ、二人とも戻ってきたんだよ……やっぱりエルナちゃんも、声を?」 「どああっ!?み、皆まで言うな!お前達と全く同じ反応だったぞ!?」 「そうですか……なんででしょうね?いかがわしい機能はないのに……」 「幸せなら関係ないですの!さ、折角の朝ご飯が冷めちゃいますの~♪」 出迎えてくれたのは、既に食べる準備を整えた三人の“お姉ちゃん”達。 そう、種族の枠を越えた幸せがアタシ達を包む。今はそれで良いのよ…… でもこの後、アタシの長い一日が始まるのよね。とても幸せな……ねっ? 「有無、ではアルマと日々の糧に感謝しつつ頂こうか……せーのっ!」 『いただきまーすっ!!!!!』 ──────楽しい楽しい、ブレイクファースト……何気ない幸せね。 第二節:聖女 そんなこんなで朝食も終わって、マイスター達は店に立ったわ。アタシは 特にそういうお手伝い……してないのよ。まだ人が、ちょっと怖いしね。 だから戦闘訓練と、居住区画でのお手伝いがアタシの日課。でも今日は、 ちょっと勝手が違ったのよね。何故なら、一緒にやってる目の前の……。 「というわけでエルナちゃん、今日は早めに切り上げて外出の支度です」 「へ?どういう事アルマお姉ちゃん……?今日はお洗濯とかしないの?」 「ええ。午後は全部開けておいてくれ、ってマイスターのお願いですし」 アルマお姉ちゃんが、そう言って作業を半分以上後回しにしてるのよね。 理由を聞いても『お昼になれば、マイスターの口から♪』って言うだけ。 そう言えばマイスター自身“今日は大事な日”だって認めてたけど……。 「でもこれだと、十一時位には完璧に終わっちゃうわよ?いいの……?」 「勿論ですよ。その頃にはクララちゃんの勉強も終わりますから、ね♪」 「あ。これって、春の新作……だけじゃないわね。一杯のお洋服……!」 それを強調する様にお姉ちゃんが出してきたのは、幾つもの衣装。そう、 今日はアタシ自身の選択も加味して、着る服を選ぶつもりみたいなのよ。 そこまで気合い入れるって事は、やっぱり何か凄い祝日なのかしら……? 「あたしとクララちゃんで、エルナちゃんの衣装合わせとかしようかと」 「そ、そう?この中から自由に選んじゃって、いいの?何時もは、その」 「マイスターが選んでくれてますよね?でもこれからは、自身の感性も」 「そ、そっか……これも訓練の一環みたいな物ね?分かった、やるわよ」 にこにこと笑うアルマお姉ちゃんに根負けする形で、アタシは同意した。 それから頭の中は、どんな服が良いかなって……それだけで一杯。正直、 どんな類のお手伝いをしてたかは、あまり印象に残ってないのよね……。 でも時間だけは確実に過ぎて、約束通りの十一時。家事も丁度終了、ね。 「ふぅ……後は洗浄機とかに任せれば大丈夫です、というわけで……♪」 「エルナちゃんのファッションチェ~ック、と……行こうと思うんだよ」 「ふわっ!?お、脅かさないでよクララお姉ちゃんッ!後ろからッ!?」 「あ、もう始めちゃってますの~?わたしも混ぜてくださいですの、皆」 「大丈夫、まだですよロッテちゃん……ってお店はもういいんですか?」 肯くロッテと、いそいそ衣装ケースを開くクララ……二人のお姉ちゃん。 マイスターは店先で閉店準備をしているらしいわ。もう、お仕舞いなの? そんな疑問を投げかける間もなく、アタシは自らを着せ替え人形と為す。 「え、えっと……こんな帽子とか、どうかしら?自信、ないけどさ……」 「それなら、このコートも肩に掛ける形が似合いそうなんだよ?ほらっ」 「わ、わ……本当、いいわね。あ、でも……内側はどうしようかしら?」 「ブラウスは此処に。後は上着……フリルを殺さない方が、いいですね」 「敢えて『人形らしい関節』を引き立ててみるのも、いい手ですの~♪」 そこで驚いたのは、お姉ちゃん達の感性。今アルマお姉ちゃんが着てる、 肘・膝とかの関節を完全に覆い隠す物もいいんだけど、一方でこの独特な 関節を『引き立て、わざと見せつける』方法で、雰囲気を調整する手段も あるらしいの。それは、被造物としての様式美を出す……初めての経験。 「ほらほら、真っ赤になっちゃダメですよ?短いソックスにヒール、と」 「スカートも、パニエで膨らませつつ丈自体は短め……かな?ほら……」 「腕は肘手前ギリギリまでの手袋で、寒そうに見えない工夫もしますの」 「え、えとえと……で、ブラウスがこのフリル一杯のね……後、首は?」 夢みたいな体験よ。アタシは、昔は勿論だけど……“妹”となってからも 自分で服を選んでいくという事が、あまり無かったのよ。時期的に丁度、 マイスターが上から下まで揃えた物を作ってたから。でも、今日は違う。 お姉ちゃん達の意見を取り入れつつも、これは正真正銘アタシの服よッ! 「そうですね……コードタイが“Electro Lolita”の定番なんですけど」 「こういう短くて太いネクタイもいいですの~♪幾つか種類が……っと」 「これにするわ。銀十字の刺繍が、胸元に来る形なら……どうかしら?」 「完璧なんだよッ。後は幾つか装飾品を付けて……さっきの帽子と外套」 「あ、ありがと。マイスター、喜んでくれるかしら?アタシのセレクト」 アタシは、顔が熱く……むず痒くなる様な錯覚を覚えたわ。皆は、大きく 肯いて保証してくれたけどさ……紫水晶のピアスと水晶の腕輪を嵌めて、 いざ愛そうと日々頑張って接している、唯一の“人間”を待つと……ね? こう……コアやCSCに流れるパルスの勢いが、速くなるのを感じるの。 「ふぅ、ロッテや。シャッターも下ろしたし、店はもう大丈夫……おっ」 「お、おかえりマイスター……その、主にアタシが選んだのよ。どう?」 そして彼女は……マイスター・晶お姉ちゃんは戻ってきたわ。アタシを、 髪の毛の先から爪先のパーツまで、細かく見据えるの。なんだか、全身が むずむずして、これは……『恥ずかしい』わ。見られている、って意識が 強くなると、少し不安になったりするの。でも、マイスターの指は……! 「可愛いではないか。シックでありながら神姫の美しさが出ているぞ!」 「そ、そう?あの、アドバイスで……敢えて関節を覆わなかったのよ?」 「有無。敢えて魅せる事で、神姫独特の妖しげな可憐さを引き出す手か」 アタシを抱き上げて、服が乱れない程度に撫でてくれたわ。大丈夫だよ。 貴女は可愛らしいんだよ?……と、声にこそしないけどそういう想いが、 アタシには感じられたわ。こうしてお洒落に目覚めたのかしらね、皆も? 「さて。エルナへのアドバイスは見事だが、そろそろお前達も準備だぞ」 『はいっ!!!』 「え?じゅ、準備……あ、着替えるのね。そう言えば、今日は何なの?」 「有無……そろそろよかろう。今日は“バレンタインデー”と言う日だ」 漸く合点が行ったわ。でも、名称は聞いた事があるけどそれがどんな日で 何時なのかは……殆ど知らされてなかったから。勿論、意義も知らない。 けど、皆はとても楽しそうに準備を始めたの……いい日なのは、確かね。 「大切な人に贈り物をして、感謝と友愛を示す日ですの♪日本だと──」 「チョコレートを男性から女性に、という形が定番化してますけどね?」 「その由来からすれば、一応“チョコ”には囚われなくてもいいんだよ」 「有無、それに……そのな?実際……私の誕生日でもあるのだ、今日は」 そう言ってマイスターはアタシを伴って、自分自身も着替えを始めたわ。 生まれた日が嬉しい、という実感はまだアタシにはないけど……本当に、 “心”の底から嬉しそうなのが、傍目からでもよく分かる位の笑顔なの。 「エルナや。手持ち無沙汰なら、少々持っていてくれぬか?ほれ、頼む」 「う、うんっ。そう、今日は“大切な日”なのね……アタシ達姉妹には」 「そう言う事になるな……取りわけ今年は、皆に“愛情”を告げた年だ」 その呟きで、皆が黙ってしまう……というよりは、皆顔を紅くしてるの。 勿論アタシだって例外じゃない。あの夜の事は、今でも忘れていないわ。 “バレンタイン”という行事は、その想いを強化する意味合いがある…… よく知らないアタシでも、それだけは直感的に察する事ができたからね? 「ん……すまぬな、もう大丈夫。よし、私の準備は出来たが……どうだ」 「準備は整いましたの~!わ、マイスター……気合入っていますの~♪」 「そう言うロッテお姉ちゃんだって、白と水色のワンピースが綺麗だよ」 「クララちゃんも、普段より長考してましたよね。あたしも、ですけど」 そうしている内に、準備は整ったわ。白のドレスに黒のコートで、全体を お姫様みたいに飾ったマイスターを初めとして、三人のお姉ちゃん達も、 髪色とモノトーンを絡めた、個性的なコーディネイトに仕上がったのよ。 アタシも白黒織り交ぜてるし……こう言うのはやっぱり素敵、よね……♪ 「さて、では準備が出来た所で……街へ繰り出そうではないか。往くぞ」 『はいっ!!!!』 ──────こうして、長い一日が始まるのね……楽しみだわ。 次に進む/メインメニューへ戻る
https://w.atwiki.jp/kunitachirfc/pages/32.html
11月の幹事会におけるwikiへの意見とそれに対する回答を記載いたします。 プロフィール写真や戦術等を記載したいので、外部に対しての閲覧制限が欲しい。 閲覧制限がかけられるよう、wikiを移転しました。ページごとに閲覧制限を設けることができます。メンバー認証はパスワードで行うため、メールマガジン等で会員のみに知らせることによって簡便に認証を行うことができます。 動画や画像が公開できると良い。 動画…データ容量の都合上、wikiに直接置くことは難しい。youtubeやニコニコ動画などの動画サイトに動画を置き、それをwiki上で表示する、またはwikiからリンクを張る方法なら可能。 画像…概ねwikiに直接置くことができる。プロフィール写真や練習風景などなら十分可能。ただし、枚数が多い場合には、手間や見やすさを考えると画像共有サイトでまとめて公開し、そこにwikiからリンクを張る方法が良いと考えられる。 wikiだとHPに比べデザイン等の自由度が低いのではないか。 確かにwikiはHPに比べデザインやシステムの自由度が低い。ただ、最初から形が決まっている点は管理の容易さという観点から望ましいとも言える。一応、スタイルシートやプラグインの利用である程度のデザイン変更は可能。 アフィリエイトを利用することで会費の足しにすることができるのではないか。 @wikiはアフィリエイトに対応しているため、技術的には可能と思われる。設置が望まれるようであれば、会計の方とも相談して設置してみます。
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/321.html
そのじゅうご・みっつめ「さあ反撃の狼煙を上げろ・3――ジジィと神姫――」 件の強化案にもあったのだが、どうも親父はこのジイ様――母さんの父親――に何らかのツテを求めていたらしい。 僕のジイ様は、趣味を仕事にしている人で、「息抜きと人生は同義語だ!」と言って憚らないダメ壮年だったりする。 はっきり言ってしまえば、親父のアップグレード版。……ダメさ加減が上位種って、マイナーダウンじゃなかろうか? そんなジイ様が趣味でやってる仕事ってのが、小説家だったりする。桜田柄今(さくらだ・つかいま)というペンネームで、『デヴォ探シリーズ』という連作ミステリを執筆している。かくいう僕はその一編すらも読んだ事はないけど、どうも好評らしい。 僕の主観だけで言わせて貰えば、こんないい加減なジイ様が作家だという事実に心苦しさを感じないでもない。はっきりと、端的に言ってしまえば、「他の作家先生たちに謝れ!」 という心境だったりする。 要するに、ダメ大人っぷりを目の当たりにする親類としては、そう言わざるを得ないくらいの特異なパーソナリティーの持ち主ということ。 まぁ、そんなジイ様は、そのシリーズモノのおかげかなんかで、玩具メーカーやその他色々なところにコネを持っていたりする。 親父はそこに目をつけていたらしかった。 今、僕とティキはチョット大きめな一軒家の真ん前にいる。 お屋敷とか館とか、そこまでの規模では決して無いけど、それでも一般的には『広い』と認識される一軒家。 まぁ立地条件が良かったと言うか悪かったと言うか、とにかく不便な所ではあるので、これくらいの広さがあっても、安く購入できたらしい。 決して大きくは無い門には『葉月』と彫られた表札が掛けられていた。 ここの家の家主は葉月総(はづき・そう)と言う名の60過ぎのジイ様で、オタク気質の持ち主。更に付け加えるなら、自分と趣味が合うからといって快く娘をその男のところに嫁に出したという逸話まで残す変人。そして、僕の亡父に武装神姫を進めた張本人。 つまり僕の、紛れも無く血のつながった祖父。母の父親。親父の言うところのお義父さん。 ……諸悪の根源。 いや、ジイ様のおかげでティキと出会えることが出来たわけだから、感謝すべきなのか? 兎に角、僕らは休日を利用し、わざわざ交通の便も少ないこんな僻地までやってきたわけだ。 田舎だけあって、庭も広い。いや、あくまで庶民感覚で。 それでもティキは感じ入ったらしく、しきりに感嘆の声を上げ、キョロキョロとあたりを見回した。 さすがにご近所さんで、これくらいの規模の個人宅なんて無いからなあ。一応新興住宅地だしね、僕の家の周りは。 十数歩も飛び石を歩き渡ったところで玄関にたどり着き、僕は呼び鈴を鳴らす。 待つこと数秒。 「よく来たな、ボウズ」 そのむやみやたらに勘違いした若作りファッションのジイ様は、ニカッと不自然に白い歯を見せて笑った。 居間に通された僕達は、なんだか居心地の悪さを感じていた。 何でこの家は神姫にお茶を運ばせてるんだろうね? 四体の神姫たちは手馴れた様子で僕らをもてなしてくれている。 で、当のジイ様は上座でどっしりと座っていたりする。 ……この家じゃこれが普通なのか? 「バアさんに三行半突きつけられてから、一人暮らしで何かと不便でなぁ。神姫たちが家に来てからすっかりと楽になったよ」 やっぱりこれが普通なんだ…… 「マスタ、ティキも手伝いした方がいいですかぁ?」 こっそりと僕に聞いてくる。それに対し、僕は小さく首を横に振った。 この状況が平素なものだとしたら、僕やティキが手を出すのは遠慮した方がいい。それこそ大きなお世話ってヤツだ。 「でボウズ。今日は何のようかね?」 ジイ様は緑茶を啜ると僕に笑いかける。 その笑顔は何処か邪悪めいていて、うがった見方なのを承知で言わせて貰えば、「ようやくお前もこっちの世界に来たか。それ見たことか、この隠れオタめ!」と言ってる様に感じられる。 「くっくっくっ。ようやくお前もこっちの世界に来たか。それ見たことか、この隠れオタめ!」 …………本当に言いやがった! 「しかし女に振られてからやっとこさ本性顕にしたつーのがなんとも情けないが」 止めまで刺す気か! 「大方ボウズの事だから、ティキちゃんの愛らしさを見てコロッと態度を代えたんだろ? 『萌ー』とか言って。……まったくムッツリだな」 言ってねーよ。更にいらんレッテルまで貼ってくれたよ、このジイ様! そこまで言うとジイ様はテーブルに用意されていた大福に手をつける。 「で、萌々エロボウズ。用件を早く言わんかい」 「誰が『萌々エロボウズ』か!」 「マスタは『萌々エロボウズ』なのですかぁ!?」 「ちっがーう!」 このジイ様は昔っから僕をこういう風にからかって遊ぶのが大好きだったんだよ。 普通孫にこんな仕打ちするか? 「相変わらずからかい甲斐があるボウズだな。……まぁ、ボウズがオレッチを訪ねて来た理由に心当たりもないわけではないが……どうせなら本人の口から聞かせてくれんか?」 人の悪そうな笑みを浮かべながら飄々と言ってのける。 実際敵いません。お手上げ。母さんがしっかり者なのも良くわかるよ。ホント。 反面教師がこうも間近に居るんじゃ、ああもなる。 「……武装神姫の、ティキの武装強化案。親父が頼んでいたパーツを受け取りに来たんだ」 僕はジイ様の目をしっかりと見据えて、はっきりと口に出していった。 ジイ様はニヤリと口を歪ませる。 「別に、ボウズにやってもいいけど、ありゃあボウズの手にゃ余るぞ?」 「それでも、譲って欲しい。親父がやりたかった事をやり遂げたい、から」 「旦那さんが最後に残した物を、無駄にするのはイヤなのですよぉ」 ジイ様は口元を歪ませたまま僕らをジッと見定める。 うーん、なんとも居心地が悪い。 おもむろにジイ様はお勝手に向かって声をあげた。 「おーい、ヒワよ。あのパーツを持ってきてくれ。アトリ、お前は例のメモを」 「畏まりました」 「了解です」 すぐさま返事が返ってきて、待つこと数十秒。 仲居さんの格好に、ウイングユニットを取り付けたアーンヴァルのヒワが、箱を抱えて飛んで来る。ホテルマンの制服を着て、アームユニット、レッグパーツを装備したストラーフのアトリがメモの束を抱えてやって来る。 先ほどから、ある意味珍妙な格好の神姫が四体、僕らを接客しているのだから、居心地だって悪いというものだ。 ……こんな趣向の持ち主だからバア様が出て行くんだよ。 心の中でそっと嘆息。 そんな僕に気が付いているのかいないのか、ジイ様は二体からそれぞれ持って来てもらった物を受け取り、それぞれに礼を言う。 その細やかさが何で生身の、それも肉親に向けられないのかな? 「さてと、これが修芳(あつよし)君から頼まれていた物だ」 そういって二体の神姫より受け取った物を、僕の前に差し出す。 ちなみに、修芳というのは親父の事。 「これと、先に届いていた演算ユニットで、修芳君の構想していたユニットは完成するはずだ」 ジイ様は滅多に見せることがない真面目な顔で言う。 「一応このメモには大まかな回路図が記されているが、間違いなくお前には理解できんだろう。それでも、これを持って行くか?」 「うん。それでも僕はこれを完成させる。させてみせる」 僕も、ジイ様に負けないくらいの気持ちを持ってジイ様に告げた。 「……わかった。持って行け。本当なら修芳君に代金を請求するつもりだったが、これは修芳君への弔い代りだ」 ジイ様は残ったお茶を煽るように飲み干した。 「……ところでジイ様」 「なんじゃい」 「演算ユニットって、どこ?」 「あ? アレなら修芳君がすでに持ち帰ったぞ」 親父が持って帰っているのか。うーん探して見るか。 だけど本当はこういうコネって、なんかズルしてるみたいで好きじゃないんだけど。 言い訳だよなぁ。 言い訳だけど。 言い訳に使いたくはないけど、親父の思いに答える為に、僕のくだらないプライドはこの際無視してしまおう。 その後、僕らはジイ様と食事をし、ジイ様の家を出るころにはすでに夕暮れ。暗くなるとこのあたりは本当に真っ暗になるというので、僕らはお暇することにした。 「ジイ様、ありがとう」 「ありがとうなのですよぉ♪」 僕らはジイ様にお礼を言うと、ジイ様は照れたような顔をして。 「イイんだよ。気にすんな」 とだけ言う。 「それじゃあな」 そう素っ気無く言うと、ジイ様はそのまま玄関の戸を閉めようとした。 が、その時、 「先生。私お見送りに行ってきます」 ヒワはジイ様にそう断わると、スーッと外へと飛び出す。 「そうかい? じゃあ頼むな」 そう答え、今度こそジイ様は玄関の戸を閉めた。 「別にまだ明るいから大丈夫なのに」 申し訳ない気持ちになって、僕はヒワに言った。 「いいのですよ。ここら辺は何も目印がないので迷いやすいのです」 「そうなのですかぁ?」 「はい。……それと、雪那様にお話もありまして」 僕とティキは顔を見合わせる。 「移動しながらお話しましょう」 ヒワはそう言うと進み始めた。 家の門を潜り、角を曲がったところでヒワが口を開く。 「雪那様。お願いが御座います」 金髪に和服、そしてウイングユニットを装着したその神姫は静かにそう言った。 「時折、本当に稀で構いませんので、たまにこうして先生を訪ねてきてはくれませんか?」 「え? いや、まぁそれは。別に構わないけれど……なぁ」 僕はヒワの言葉に答え、ティキに同意を求める。 「ティキはまたお爺さんと遊びたいのですよぉ♪」 ティキは元気良く答えた。 「有難う御座います」 ヒワは浮遊しながらも器用に頭を下げる。 ここで「なんで?」と聞くのは、鈍感が過ぎるか? 「……先生は奥様が出て行かれた後、大変に塞ぎ込んでいたと言います。私達が先生の所でお世話になってからも、時折寂しい思いをされているようです」 …………………… 「それでも今までは、時折修芳様がいらっしゃっていましたので、元気にやっていたのですが、その修芳様が亡くなったからは、さすがに気落ちしたご様子で……」 僕も、ティキも、項垂れてヒワの言葉を聞く。 「それでも私達の前では気丈に振舞って居られますが…… そんな先生を見ているのは悲しいのです」 バア様が今でもジイ様と連絡を取っているのか僕はわからないけど、少なくても母さんはあまりジイ様と連絡を取り合っていない。 別にジイ様と母さんが仲が悪いと言うわけじゃないけど、男親とその娘って、そんなもんなんだと思う。 加えて、なぜか親父はジイ様と仲が良かった。親父はジイ様を本当の親以上に思っていたと、聞いたことがある。 そういう事をちゃんと考えたら、やっぱりジイ様も寂しいのか、な……? 「大丈夫だよ。僕はちゃんとジイ様が好きだから。また来るよ」 「ティキもまた来るですよぉ☆ もっと、いっぱいお話したいですぅ♪」 僕達は勤めて明るくそう言った。 それを聞いて、ヒワは優しく微笑んだ。 そんなこんなで必要なものとそれに伴うある程度のヒントを手に入れたが、僕は案の定それを完成させる事が出来ずにいた。 当然だよなぁ。僕は専門家ではないし、その手の知識に明るいわけじゃない。 神姫のオーナーになってから多少はそういう知識に明るくなってはいたけど、それでも僕の手には余った。 ジイ様が指摘した通りの結果、というわけだ。 だけどやっぱり諦めるわけには行かない。 専門的な知識が僕にないのであれば―― ――専門家に聞けばいいじゃないか。 終える / もどる / つづく!